砂漠の夜の幻想奇談



 トルカシュとシャールカーンが話している最中、大臣ダンダーンは悔しげに唇を噛むゾバイダ王妃を横目に問い掛けた。

「軍の圧力に、市民の反感。ゾバイダ王妃様、これらの問題にどう対処するおつもりか、うかがっても宜しいでしょうか」

「くっ…!」

何も言えない。

「このままでは、シャールカーン王子を王になさらないと反乱が起こりそうですな」

ダンダーンがしれっと言ってのけた時、凛とした女性の声が後ろから聞こえた。


「ならばシャールカーンを王にすれば良い」


シャールカーン達を含め、皆一斉に振り返る。

そこにいたのは前王の妹フェトナー様だった。


「我が夫ダンダーン以外の大臣がどう思っているかは知らぬが、私はシャールカーンを王にと望むぞ」


フェトナー様がシャールカーン側についた。

これぞ決定打。

彼女の権力はゾバイダ王妃よりも強い。


シャールカーンの王位継承権剥奪に同意していた大臣達がおどおどし始める。