「へえー。王宮、それに護衛官か。サフィーア、君は王族なんだね」
気づかれた。
サフィーアは己の迂闊さを呪った。
死刑宣告を待つ囚人のように、彼女の白い顔がさらに蒼白になる。
「キリスト教国のお姫様か…」
のしかかられたまま値踏みするような眼差しで全身を見られ、サフィーアは目をギュッとつぶった。
「うん。君が震える理由がなんとなく理解できたかな」
意外にも優しい声が降ってきた。
恐る恐る目を開ける。
「君にとって俺は敵国の王子。悪魔に等しいだろう」
シャールカーンは物憂げな表情をしていた。
「まあ、俺からしたら十字軍を結成して攻め込んでくる君達の方が悪魔に思えるけれど」
「悪魔って…!」
失礼ね、と言おうとした彼女の声は、王子の唇に奪われていた。



