「亡霊とは失礼な。まあ、似たようなものか。俺は人間ではないからな」
妖しく微笑みつつ、青年は男を廊下の奥にある大広間へいざなった。
「お前は品はないが、俺の大切な愛しい妻を我がもとに連れてきた人間だ。礼もかねて宴を開く。少し付き合え」
それから腕の中にいる未だ口を封じられ、縛られたままの少女を眺めて言った。
「おや、お姫様はまた口がきけないのか。つくづく俺はお前の声を聞けない運命にあるらしいな。まあ、お前の愛らしい声を堪能するお楽しみは後々にとっておくか」
少女の青い瞳が涙で潤む。
「泣くな。俺も嬉しい」
彼女の目尻にそっとキスをすると、青年はパチンと指を鳴らした。
すると、一瞬で大広間に豪勢な料理が現れた。



