砂漠の夜の幻想奇談


「そうか…」

考えるように目を閉じる。

溜息を一つ吐き出してから、シャールカーンは静かに口を開いた。


「別に、構わない」


「は……?」


大臣ダンダーンが目を点にする。


「私の王位継承権が剥奪されようと、なんら構わない。もともと私は王になるつもりなどなかった。次の王にはカンマカーンが相応しい」


(シャール!?それでいいの!?納得しちゃうの!?)


「兄上!?それは本心なのですか!?」


ゾバイダ王妃の横にいたカンマカーンが前へ出る。

「シャール兄上こそ王に相応しいのに…!僕に王など務まりません!嘘をおっしゃらないで下さい!」

「控えなさいカン!シャールカーン王子の母は貴方の父上を弑逆したのですよ!そんな女の息子に王位を継がせるなど、あってはなら――」

「うるさい!!!!母上は黙っていて下さい!!」


その場にいた誰もが目を丸くした。

普段おっとりしているカンマカーン王子が、母親に怒鳴った。

あのゾバイダ王妃に「黙れ」と命じた。

これぞまさに青天の霹靂だった。