砂漠の夜の幻想奇談



 母親は教育に熱心な人だった。

息子を文武両道の秀でた王子に育てたかったのか、ダウールマカーンは子供の頃からスパルタ教育を仕込まれていた。


『くっそ!イタッ…!』

鞭打たれた腕がズキズキ痛む。

勉強中、コーランの解釈が間違っていると指摘され、お仕置きされた。

『ムチばっかふり回しやがって!あのクソ女!』

鞭があっても飴はない。

良くできた時に頭を撫でられた記憶なんて皆無。

できて当たり前。

そんな態度で罰ばかり与えられる。

ダウールマカーンがブドゥール王妃に「母親」を見出だしたことは一度もなかった。

彼の中で彼女は常に「敵」だった。

自分の存在を否定した父親も然り。

ダウールマカーンは親の愛情を知らなかった。


『ハァ……次の時間は詩のアンショウか…。サボりたい』


彼のサボり場所は決まって一つ。

誰も怖くて近寄らないところ。

そう――バキータの檻の中。