すると、軽く溜息をついた王妃が初めて声を荒げた。
「王妃の私に逆らうとは無礼な!カシェルダ!渡しなさい!」
「っ!……狡いです!こんな場面で権力を振りかざすなど」
まだ素直に従わないカシェルダを睨みつけ、アブリザ王妃はさらに脅しをかける。
「……いいでしょう。毒薬を渡さないなら剣で自害します」
「おやめ下さい!わかりました!差し上げます!」
剣で自害されるくらいなら毒を呷られる方が王妃としての身分に相応しい。
カシェルダは泣く泣く、震える手で毒の小瓶を差し出した。
「ありがとう。さあ、貴方はもうお行きなさい」
「い、やだ…!死なないで下さい!アブリザ様…!」
「お行きなさい」
毅然とした態度でカシェルダに背を向ける。
アブリザ王妃は振り返ることなく王の死体が横たわる寝台の方へ行ってしまった。
「っ…」
涙は止まらなかった。
カシェルダは声無く泣きながら、月夜の中庭へ飛び出した。



