砂漠の夜の幻想奇談


「シャールを…王に…!?」

驚いて息を呑む王妃にカシェルダは頷く。

「はい。王様が崩御された今、シャールカーン王子が次代の王に相応しいと誰もが認めるはず。ですから第二王子の母君である貴女様がここにいてはいけません。犯人と疑われる前にどうかお逃げ下さい」

カシェルダの言葉をよくよく考えてから、アブリザ王妃は徐に口を開いた。


「王様を殺めてまでシャールを王にと願った理由は、何かしら…?」


問い掛けを受け、カシェルダは静かに目を閉じる。


「………護りたい方がいるのです」


サフィーアを思ってからゆっくりと顔を上げ、アブリザ王妃と視線を合わせる。

「私の命を賭けてでも、お護りしたい方が」

真っ直ぐな瞳。

この王宮で暮らしていた頃の彼が、こんな眼差しを見せたことは一度もなかった。


「……成長、しましたね」

「え?」

王妃は柔らかく微笑む。

「わかりました。ですが、私はここに残ります」