砂漠の夜の幻想奇談


消え入りそうな声をしっかりと拾って、アブリザ王妃は素直な本心を口にした。

「今も昔も、私は貴方のことをシャールと同じように愛しているわ」

僅かにカシェルダの目が見開かれたが、すぐにそれは苦笑の表情に変わる。


「………貴女は、優し過ぎる」


この表情を見て、アブリザ王妃は遠い過去のダウールマカーンを思い出した。

実母の話題になるとよく見せていた表情だ。

「王子、なぜ行方不明になったの?あの時、確か貴方は十歳くらいだったわよね?一体何があったの?」


「俺の過去なんて、つまらない話だ。それよりも、問題なのは現在です」

言ってから速やかに跪く。

彼の顔は一介の軍人カシェルダに戻っていた。

「王妃様、私が王を弑し奉った理由はシャールカーン王子を王にと望むからです」