砂漠の夜の幻想奇談


声を荒げ、身を震わせるカシェルダ。

そんな彼に近寄ると、アブリザ王妃は愛情を持って優しく抱きしめた。


「私の息子同然だった貴方を見間違えるわけないわ。大きくなりましたね、王子」

子供に対する母親の愛情。

幼かった自分が一番欲しかったもの。


「……アブリザ、様っ…」


カシェルダの瞳から自然と涙がこぼれた。


「貴女が……貴女が俺の母上なら、どんなに良かったか…」


呟いてからカシェルダはアブリザ王妃から少し離れた。

「ダウールマカーン王子…?」

「その名で呼ばないで下さい。……俺は、オマル王を父とは思っていない。思いたくもない。それに、母親なんて知らない。愛されたこともないから」

カシェルダはダウールマカーンの眼差しで王妃を見つめた。

「貴女の息子であるシャールがとても羨ましかった。憎らしくて、妬ましかった」

今までずっと封じ込めていた思いを吐き出す。

涙を拭いながら彼は続けた。

「優しくしてたのは貴女に近寄りたかったからなんだ。貴女はシャールに愛情を注いでいた。俺も……俺もあんなふうに、愛されたかった…」