砂漠の夜の幻想奇談


「ダウール、マカーン王子…?」


その名を聞いて、カシェルダの歩みがピタリと止まる。


「貴方は…ダウールマカーン王子では、ありませんか…?」


もう一度問い掛ければ、カシェルダは振り返った。


「私はカシェルダです。行方不明の第一王子ではありません」

「本当に…?」

「………」

沈黙して視線を落とすカシェルダ。

「本当にそうなのですか?」

「………」

彼は何も答えなかった。

「私は第一王子をよく覚えています。シャールをとても可愛がってくれた…あの優しい王子のことを」

「違っ……俺は…」

「幼い頃、よく二人でやんちゃをしていましたね。私のところにもブドゥール様には内緒で遊びにいらして…」

「違う!!ヤメロ!!俺には弟なんかいない!父も母も知らない!知らないんだ…!」