砂漠の夜の幻想奇談


懐から短剣を取り出し、素早く中央にある寝台へ。

邪魔な天蓋を払いのけて王の心臓を刃で一突きに。

「あ゙ぁぐっ…!!」

断末魔の悲鳴を防ぐため咄嗟に枕を王の顔へ押し付けた。


プロの暗殺者顔負けの行動。

この一連の動作をカシェルダは見事にやってのけたのだ。


ゆえに暗殺は成功した。


心臓に短剣を突き立てられ、事切れたオマル王。

カシェルダは冷めた眼差しで死体を一瞥すると、隣で眠っている側室に目を向けた。

後は女を毒殺して罪を着せればいい。

毒の小瓶を取り出そうとした時、寝ていた女が身じろいだ。


「ん……王様…?」


異変に気づいたのだろうか。

起きてしまった。

叫ばれると厄介なのでカシェルダが彼女を気絶させようとした時――。


月明かりによって、起き上がった女の顔が見えた。


「ア……アブリザ王妃…!!」


単なる側室ではなかった。

シャールカーンの母親がそこにいた。