砂漠の夜の幻想奇談



 後宮に勤める黒人宦官達の出入りに混じって潜入を果たす。

広い後宮内において、カシェルダは迷いなく王の寝所付近まで辿り着いた。


(真正面から入るのはマズイな)


見張りの奴隷がいる。


(窓から行くか)


近くの窓から一度外へ出ると、石畳みの中庭を走って王の寝所へ向かった。

月明かりを頼りに窓辺をうかがう。

よく見れば寝所には小さなランプが燈っていた。


(チッ、まだ起きてるか)


しばし待つ必要がありそうだ。


それから、中庭に隠れたまま小一時間ほど待たされた後、ようやくランプの灯が消えた。


(眠ったか…?)


静かに静かに窓へ近寄る。

王の寝所は一階で、窓の多くが中庭に面しているため侵入は容易そうだ。

人の声や物音がしないことを確かめる。


(……大丈夫そうだな)


ちらっと目でも確認してから、カシェルダは窓から中へ忍び込んだ。