砂漠の夜の幻想奇談



 対局が終わるとすぐ、シャールカーンは自分の側近――トルカシュとバルマキーを自室に集めた。

「はっ!?王様が西へご出陣!?」

「しっ!大声を出すなトルカシュ!」

サフィーアとドニヤは隣室にいる。

なるべくならサフィーアには知られたくない話だ。

「オマル王様ご自身が軍の総司令官に?」

バルマキーの問いにシャールカーンは考えながら頷く。

「恐らくな。でなければ王自ら出陣などしない」

「困りましたね」

「全くだ…」

「ど、どうするんですか!?このままじゃマズイじゃないですか!サフィーア様きっと号泣ですよ!?」

うなだれて溜息をつく二人とは対照的に、トルカシュは落ち着きなくおどおどしっぱなしだ。


「わざと負けるように俺が上手く軍を動かす……しかないだろうね」

「王様に不審がられます」

「だが今のところ、これしかない。コンスタンチノープルへ辿り着く前に、全軍撤退せざるを得ない状況をつくってみせる…!」


サフィーアの笑顔を護るためなら、自軍を騙すことも已むなし。

そんなシャールカーンの声をカシェルダは入口の陰でこっそり聞いていた。