砂漠の夜の幻想奇談


「あ、まずったな。名乗り忘れてたか。俺はシャールカーン。このダマスの太守にしてオマル・アル・ネマーン王の息子だ」

指摘されて自分が色々すっ飛ばしたことに気がついたシャールカーン。

こんなミス、女性の前では初めてだ、なんて考えているとサフィーアの様子がおかしくなった。

「オマル・アル・ネマーン王の…息子?」

震え声。

しかしそれは小鳥の囀りのごとく耳に心地好い。

「父上の名前じゃなく、俺の名を囁いてほしいな」

「シャール、カーン…?」

「そう…」

よく言えたと褒めるように抱きしめると、サフィーアはシャールカーンの腕の中で泣きそうな声を上げた。

「まさかここって、イスラム教徒の国なの!?」

答えを聞く前に、彼女は涙目になりながら動揺して頭を振った。

「どうしよう!?ここは異教徒の国!?嗚呼…父上!母上!」