砂漠の夜の幻想奇談



(あ、あれ?今の笑顔、どこかで…?)


「不可侵なる美の女主人。我が眼の光よ」

歌うように言葉を紡ぎながら純白のベールに口づける。

そんな彼女の流れるような動作にドキッとしていると、不意に黒髪美人が耳元で囁いた。


「この無垢なる身体が今宵、純潔を失うかと思うと酷く心が憂鬱になる」


(え……?)


低い低い声だった。

男性的で、しかも聞き覚えがある。


(も、もしかして――!)


サフィーアが黒髪美人の正体を心の中で叫ぼうとした瞬間。


「失礼致します!!サフィーア姫!こちらに魔…ダハナシュが来ませんでしたか!?」

カシェルダの登場に「やっぱりか」と思う。


(ここにいるわ!この女の人よ!)


サフィーアが指差したのは今まで話していた黒髪美人。

見た目、完璧に女性だが、ダハナシュは何にでも変身できるのだ。

女性に化けて宴に潜り込んでいても不思議じゃない。