砂漠の夜の幻想奇談



 女性のみの宴会場では貴族の娘達や臣下の妻などがサフィーアに笑みを向け、思い思いに歓談していた。

既婚者女性は微笑ましいものを見る眼差しで新婦に声を掛けているが、独身貴族の娘達は笑顔を浮かべるも上辺だけ。

内心、嫉妬で腸(ハラワタ)煮えくり返る思いの者が少なくない。

この羨まし過ぎる花嫁に何か意地悪をしてやりたい衝動に駆られるも、フェトナー様の御前。

王妹の、しかも女同士の醜い争いが大嫌いな彼女の前で何かやらかそうという勇者はいなかった。


と、そんな時、一人の黒髪美人がニコニコしながらサフィーアの傍にやって来た。

「とてもお美しいですわ。まさに目の保養。もっと近くで拝見してもよろしくて?」

特別断る理由もないため頷くと、女性はすぐに距離を詰めてきた。


(ち、近い…!)


確かに許したが、鼻と鼻が衝突しそうな至近距離にサフィーアはビックリした。

「ああ…やっぱり」

妖しく、艶やかに笑う黒髪美人。