砂漠の夜の幻想奇談


「姫の幸せ、か…」

目を閉じて考え込むルステム。

彼も葛藤しているのだろうか。

「仕える俺達が姫に対して恋情を抱くのは、褒められたことじゃない」

カシェルダは立ち上がった。

ルステムと対等に視線が交わる。

「想いは胸の内に隠しておけ。これからも、ずっとな」

忠告を受けルステムは力無く笑った。


「………わかってる。ただ…ちょっとぐらつく」

「わかる。が、堪えろ。俺もそうしてる」

妙なところでわかり合ってしまった。

互いの苦労に苦笑しつつ歩き出す。

「サボり過ぎたか。俺は警備に戻る。トルカシュじゃ役に立たないからな」

「確かに。さっきの時点で酔っ払ってたし。で?僕はどこを担当すればいい?」

「そうだな…。じゃあ広間の――」

言いかけた時だった。

視界の端に不快な人物を捉えカシェルダは威嚇モードに入った。

「あの魔神…!こんな日まで!」

そのまま一目散に駆け出すカシェルダ。

「あっ、おい!」

ルステムが呼び止めるのも無視して、屋敷内へ消えたダハナシュを追いかけた。