砂漠の夜の幻想奇談


「ここはダマスさ。君だってわかっているだろう?とぼけてる?」

「ダマス…」

サフィーアは記憶をたどった。

(聞いたこと、ある…。確か、ずっと東の…)


「君、名前は?」


唐突な質問に肩が強張った。

青年に向き直り、慎重に口を開く。

「…サフィーア」

「サフィーア…清らかな女性っていう意味か…。ん、いい名だ」

満足そうに頷きながら一歩一歩近づいてくる月のような青年。

そして――。


「ねえ、サフィーア。俺と結婚しない?」


「は…?」

耳を疑うとは、まさにこれ。


「言葉の通りだ。結婚しないか?」

「あ、貴方…何言ってるの!?変な冗談はやめて!第一、貴方は誰なの!?名乗りもせずに口説こうなんて、大した自信家さんね」