砂漠の夜の幻想奇談


「やる。使え」

肌の白い茶髪の青年がカシェルダの眼前で仁王立ちしている。

ルステムだった。

「ああ……すまない」

遠慮なくタオルで顔を拭くカシェルダを眺めながら、ルステムはポツリと呟いた。

「なあ」

「うん?」

「自分が大切に守ってきた姫様が他の男のものになるって、どんな気分だ?」

この男、喧嘩売っているんだろうか。

一瞬拳を握り締めたカシェルダだったが、ルステムの表情を見て怒りを引っ込めた。

彼の眼差しは切なげで、自分と似た暗さを瞳に閉じ込めていた。

「僕の主人、ノーズハトゥザマーン姫も近々カンマカーン王子とご結婚なさる。……僕は、堪えられるだろうか」

「好きなのか?姫のことが」

「君もだろう?」

指摘されカシェルダは苦笑した。

「俺は女は嫌いだ」