砂漠の夜の幻想奇談



 宴の広間で奏でられる楽の音が中庭にまで響いてくる。

賓客達の大きな笑い声も耳に障る。

カシェルダは中庭の噴水で顔を洗い、頭を冷やそうとした。

「クソッ!」

だが、苛々はおさまらない。


サフィーア姫が、結婚。


「シャールッ…!」


つくづく憎らしい男だ。

羨ましい程に恵まれた男。

自分が望んでも手に入らないものを彼は全て持っている。

血を吐く思いを何度も味わって生き延びてきたカシェルダは、王宮でぬくぬく育ってきたシャールカーンの顔を見る度に苛立ちが募るのだ。


「よりによって、お前が姫と結婚か…」

水に濡れた顔も拭かず噴水の縁に腰掛け、うなだれる。


「なんでこうなるかな…」


やっと大切な存在を見つけ、歪んだ自分を変えられるかもしれないと思っていたのに。

深い溜息を吐き出した時、頭にバサッとタオルが落ちてきた。