砂漠の夜の幻想奇談


都から連れて来たマムルーク(白人奴隷)のルステムと話をするべく席を立つ。

彼は廊下で待機しているはずだ。

「感謝致します」

ノーズハトゥに礼を言いながらカシェルダも共について行く。

隣に立つサフィーアの護衛官をちらりと見上げ、ノーズハトゥはふと思った。

「……どこかで、お会いしました…?」

初対面の気がしない。

しかし、彼は言う。

「…いえ……記憶にございません」

「そう…ですか」

とは言いつつ尚も疑うように見上げてくる彼女に、カシェルダは困った表情で視線を泳がせた。

「申し訳ございません」

「いえ…こちらこそ突然おかしなことを申しました」

ルステムのもとに着くまで、何ともギコチナイ空気が二人の間に漂っていた。