砂漠の夜の幻想奇談


「ほん、とだ…」

見知らぬ室内に絶句した。

(なんで!?私、ちゃんと自分の部屋で寝たわよね!?)

寝台に入って兄達の名前を唱えているうちに、いつの間にか眠ってしまったはず。

飛行の得意なダハナシュが五分とかからずにコンスタンチノープルからダマスまで運んできたなどとは露知らず、彼女は頭を混乱させながら月明かりの入る窓を見た。

そして、また言葉を失う。


「ここ…どこ…?」

窓の外には見知らぬ街。

サフィーアは青年の腕を逃れ、思わず窓辺に駆け寄った。



「おっと、危ない」

寝台から窓辺の定位置に戻っていた蚤二匹。

ダハナシュは近づいてきたサフィーアに潰されては堪らないとピョンピョン移動を開始する。

二匹は窓辺の端っこで賭けの行方を見守った。