砂漠の夜の幻想奇談


「逃がしません!!」

状況に気づいていないのか、テオドールがシャールカーンの肩に一撃を浴びせた。

「うぐっ!!」

左肩を襲った衝撃。

受けた瞬間シャールカーンは悟った。


(やられた…!!)


左肩の脱臼。

盾を持っていた腕がダラリと垂れる。

「クソッ!!!!」

槍の交換などしている暇はない。

隙を見せたら負ける。

シャールカーンは十分に距離を取ってから再度テオドールに向き直った。


(どうする…!!この折れた槍じゃ、テオドールに届かない…!)


テオドールの持つ槍の長さの半分しかないため、リーチが短い。

テオドールの身体を槍で突くためには、相手の攻撃をかわしてかなり至近距離に近づく必要がある。


(かわせるのか?あのテオドールの槍を…!)


防御を担当していた左腕は脱臼している。

テオドールと同じで盾は使い物にならない。


(どうする!!)


ギリリと歯を食いしばる。

顔面が熱い。


(……っ!!そうだ!)


不意に、トルカシュの言葉が脳裏を過ぎった。



――ああ~!投げたい!!俺、槍投げなら得意なんです!



(投げてみるか…)


他に手はない。

シャールカーンはギュッと槍を握り直した。