砂漠の夜の幻想奇談


「てやっ!!」

それを自分の槍で薙ぎ払いながら突き進むも――。


「あがっ!!」


横から別の騎士に脇腹を突かれた。

体勢を立て直す暇も与えられず、もう一撃が肩に加わる。

「っ…!!」

痛みに声も上げられずトルカシュは敢え無く落馬した。

勢いよく転げ落ち、地面へとしたたかに身体を打ち付ける。


「くっ……うっ…」


怪我の痛みで直ぐ立ち上がれずにいると、急に周りが暗くなった。

視界に映る地面を巨大な影が覆っている。

何かと思い、トルカシュは緩慢に顔を上げた。

すると、頭上には馬の蹄が――。


「うっ、うわあああっ!!!!」


ルカスの馬が前足でトルカシュを踏み潰そうとしている。

ルカスはニヒルに笑った。

軍馬はいななき、無情にもその馬蹄を振り下ろす。



はずが――。


「はあああっ!!!!」


駆け付けたのは、黒き竜。


「ぐあっ!」

ルカスの顎下に槍が突き刺さる。

「ルール違反だぞ。ルカス!」

落馬して無力と化した相手を馬で蹂躙してはいけない。

強烈な突きを受け、ルカスはそのまま鞍から吹っ飛ばされた。

乗り手がいなくなった馬は方向を変え、トルカシュの傍から退いていく。


「カ、シェル…ダ…?」


恐る恐る声を出すトルカシュに対し、カシェルダは怒鳴った。

「落ちたなら早く引っ込め!殺されるぞ!」