砂漠の夜の幻想奇談


「ぐわっ!!」

鞍から落ちたミロン。

咄嗟に受け身の体勢を取ったため、落馬による大怪我はなさそうだ。

カシェルダはというと、ミロンの落馬を横目にもう馬の向きを変えていた。

落ちた騎士に用はない。

素早く周りの状況を確認。

すると、トルカシュの動きが目に留まった。



丁度この時、トルカシュは苦戦を強いられていた。

自分一人に対し、周りを取り囲んでくる敵軍の騎士達。

この小部隊を率いているボスは誰あろう、ルカスだった。

「おいおいマジかよ!狡くねぇ!?」

文句を言ってみるもアラビア語。

ルカス達には通じていないようだ。

「とりあえず一旦この包囲網を突破しねーとな」

一度に五、六人も相手になどできようか。

カシェルダならいざ知らず、トルカシュの場合は無理である。

自己を奮い立たせ、馬に拍車を加え、隙を探って突進する。

「やああっ!!」

駆け出したトルカシュの馬。

「逃がすかよ!異教徒め!!」

十字架の盾を振りかざして阻むはルカス。

トルカシュの眼前に槍が突き出される。