砂漠の夜の幻想奇談


覚えていた。

サフィーアは以前、テオドールが流した涙をそれで拭ってやった。

彼は「自軍の先輩騎士が自分を庇って落馬し、死んだ」と「しかも自分もアッサリ落馬した」と悔しさを泣きながら吐き出していた。

だからサフィーアは言ってやったのだ。



――なら貴方が強くなればいいわ。泣かなくていいくらい、もっともっと強くなればいいの



「あの時からずっと、お慕い申しておりました」

あの時に励まされたから今の自分がいる。

昔より、力も心も強くなったテオドール。

「僕が勝ちましたら、結婚して頂けますか?」

真っ直ぐな眼差しがサフィーアの胸を揺さ振る。

彼の真摯な想いが伝わり、心が震えた。


(シャールが好き……だけど…)


もしテオドールが勝ったら――。



サフィーアはゆっくりとテオドールの言葉に頷いた。