砂漠の夜の幻想奇談




 その日、まだ夜が明けぬうちに礼拝は始まった。

とうとう今日が決戦の日。

クリスチャンが集まる聖ソフィア大聖堂では、試合に参加する多くの騎士達が祈りを捧げていた。

サフィーアもカシェルダと共にそこを訪れる。


(天の父なる神様、どうかシャールが勝ちますように…。あっでもでも、テオドールが大怪我しないようにお守り下さい!危険な競技です。死者がでませんように…!)


目を閉じて真剣に祈る。

普段それほど集中して黙祷しないため、礼拝が終わった後サフィーアはどっと疲れてしまった。


「サフィーア姫」

カシェルダについて大聖堂から出ようとした時だった。

「いよいよ、今日ですね」

緊張した空気を纏うテオドールが話し掛けてきた。

サフィーアは彼に向き直ると、心配げに揺れる瞳でテオドールを見上げる。

そんな姫の瞳を見つめ返してから、彼は徐に服のポケットから一枚のハンカチを取り出した。


(あら?そのハンカチ…)


「覚えておいでですか?姫が僕に下さったものです」