(あ……やっぱり、この人だわ)
つい最近思い出した昔の記憶。
過去の馬上槍試合で出血に骨折までしていたテオドール。
今はピンピンしているが、また大怪我をするのではと心配だ。
観戦中、シャールカーンと一緒についつい目で追ってしまう。
「サフィーア姫?僕の顔に何かついてますか?」
(ああっ違うの!ごめんなさい!)
テオドールに問われ、ジッと見つめていたことに気づく。
サフィーアは頬を赤らめて視線を泳がせた。
「ねえ、なんで姫様しゃべんないの?」
やはり不審に感じたのだろう。
ミロンが横にいたカシェルダに尋ねる。
「訳あって今はお声を発せられないんだ」
「訳って?」
「聞くな。説明が面倒臭い」
「何さ。知られちゃマズイ理由なわけ?」
「機密性は高い」
十二人の兄が生きているという情報はまだ公にされていない。
王子達がちゃんと帰還するまで国王はこの事を伏せておくようカシェルダに命じていた。



