砂漠の夜の幻想奇談


「なぜ俺達はこんなにも仲が悪いんだろうね。ムスリムもクリスチャンも元を辿れば信じている神は同じだ。なのに、争いは絶えない」

周りが黙る中、シャールカーンは独り言のように続けた。

「信仰心が篤いと違う宗教の人間を否定したくなるのかな。とすると、こんな疑問を抱く俺は信仰心が薄いということか…」

「テメー、何が言いたい?」

ルカスが穏やかな話し手をギロリと睨む。

すると睨まれたシャールカーンは手にした新しい槍の先を、ルカスの額にビシッと突き付けた。

「俺は宗教で人を差別したくない。我々の美徳は“寛容”だ。異教徒だから、とケチをつけてくる人間はハッキリ言って大嫌いだよ」

「テメー!!」

「はいはい、喧嘩しな~い!オレ達は向こうで練習するよ~」

暴れ出しそうなルカスをすかさずミロンが捕まえた。

捕獲した同僚をテオドールに引き渡して先に行かせる。

「ではシャールカーン殿。また」

「ああ。汝に平安あれ」

鎧だのなんだのを準備しに行く二人を見届けた後、ミロンがコソッとシャールカーンに耳打ちした。

「ルカスの言ったこと気にするなよ?」

「ああ、ご心配なく」

「そ、ならいいや」

ミロンは黒髪をかき上げながら清々しい表情で笑った。

「オレもあんたと同じ意見。言ってくれてスッキリしたよ。じゃあね」


そして彼も行ってしまった。

シャールカーンは一人、照れたように微笑んだ。