砂漠の夜の幻想奇談


安心させるようそっと額に口づけてから、カシェルダに向き直る。

「では行こうか。トルカシュも来い」

「はい!」

良い返事をして王子の背中を追う従者。

「サフィーア様、こちらへ」

ドニヤが荷物のバスケットを持ちながらサフィーアを呼んだ。

バルマキーはすでに木陰の傍へ避難している。

まだ不安は拭えないが、自分がここにいたところで邪魔なだけ。

サフィーアはゆっくりとドニヤのもとへ歩き出した。



一方、シャールカーン達はというと…。


「おい、貴様。馴れ馴れしく姫に口づけるな」

カシェルダがキレかかっていた。

「非はサフィーアの潤んだ瞳にあるね」

「一遍シめないと理解できないか?」

木で作られた台に立てかけてある練習用の槍を手に取ると、カシェルダはその先端をシャールカーンに突き付けた。