砂漠の夜の幻想奇談



(わかったわ)


護衛官に頷いてからサフィーアは不安げにシャールカーンを見上げた。


(シャール…気をつけてね)


サフィーアの中で、昔に見た記憶が蘇る。

場内に響く蹄の音。

飛び交う怒号。

次々と落馬する騎士達。

大怪我をする者や、血を流して地面に倒れ、そのまま一生動かなくなる者もいた。


(そうよ。だからあの時「あの人」も死んじゃったかと…)


額を切ったのか、顔が血で真っ赤だった。

腕も片方、おかしな方向に曲がっていた。

場外で手当てをされていた「彼」。


(あれ…?「あの人」って……)


サフィーアが何かを思い出しかけた時、シャールカーンの声が彼女の意識を引き戻した。


「サフィーア。そんな顔しないで。俺は大丈夫だよ」