砂漠の夜の幻想奇談



 人口が多い「都市」という所には様々な人間が住んでいる。

このコンスタンチノープルに関してはローマ人、ギリシャ人、ユダヤ人など、その他挙げればきりがない。

ゆえに、かなり少数でもムスリム系の人々が暮らしている居住区があったりするわけだ。

同胞が住む区域になら公衆浴場の一つくらいある、と思いきや。


「ない、な」

「ない、ですね」


王子と従者は落胆した。

街をほっつき歩き、約一時間。

どこの道に入っても公衆浴場らしき建物は全く見当たらない。

「仕方ないか…。バルマキーの言っていた方法で入るしか…」

「ええ~!諦めないで下さいよ王子!もう少し探しましょう!?」

「いや…そろそろ戻らないとバルマキーが心配す――」

言い終える前にシャールカーンは言葉を切った。

すでに辺りは薄暗くなりつつあったが、見間違えはしない。

たった今、テオドールとすれ違った。