砂漠の夜の幻想奇談


「ですから、浴場施設はありませんと何度言ったら理解するのですか」

バルマキーが額に青筋を立てている。

かなりご立腹のようだ。

「都を一つ征圧したらまず浴場を建てるほど風呂好きの俺達が!こんな風呂無しの都市で生活なんて無理ですよ!俺自信あります。一週間もちません!」

「確かに……トルカシュの気持ちは良くわかる」

真剣な表情でシャールカーンは腕を組んだ。

「バルマキー、ここの人々はどうやって風呂に入ってるんだい?」

「寝室の暖炉で湯を沸かし、大きな桶を用意してその中に温めた湯を入れるのです。ですから浴場専用の施設はございません」

「マジかよ!ここで入るのか!?」

トルカシュが驚愕する隣でシャールカーンも冷や汗をかく。

「俺も風呂に入りたいが、その方法はあまり好かないな…」


ちょっと考えてから王子は「よし!」と呟いた。

「トルカシュ、来い」

腰に短刀を差して部下を呼ぶ。

「はい!なんでしょう王子」

「街に行く。浴場を探すぞ」

「やった!行きましょう行きましょう!!お供致します!」


「王子!」

心配そうに呼び止めるバルマキー。

そんな彼にシャールカーンは笑みを向けた。

「大丈夫だよ。必ず戻るから」


こうしてトルカシュを連れ、シャールカーンは夜の市街を歩くこととなった。