砂漠の夜の幻想奇談



(あの方が、父上が推す婚約者よね)


正義感の強そうな横顔を眺め、ふと思う。


(あら…?そういえばあの方、どこかで…)


会ったような記憶があるがハッキリと思い出せない。

やはりサフィーアに忘れられていたテオドールだった。


(うーん………まあ、いずれ思い出すわ。たぶん)


深く考えてもわからないものは仕方ない。

サフィーアは視線をシャールカーンの方に向けた。


(うう~…父上の頭が邪魔でシャールが見えない…)


横一列ではなく向かい合わせで食べたかった。

クスンと涙ぐむ。

そんな娘に気づいたのか、隣に座っていた王妃様がワインを注ぎながら王様に言った。


「王様、次の曲になりましたら私と踊って下さいな」

「ん?ダンスか?お前から誘うとは、久々だな」

「ふふ、たまにはよろしいでしょう?」


会話をしている間に曲が変わった。

妻に注いでもらったワインを一気に飲み干し、アフリドニオス王が立ち上がる。