砂漠の夜の幻想奇談


「もし君を、手折り…この腕…いや、この手に…」

「テオドールは何を呟いてるんだ?」

真剣な表情で呪文のように言葉を紡いでいるテオドールを見て、カシェルダがミロンに尋ねる。

「ああ、明日のために詩をね。暗記中」

「そうか……。覚えられたのか?」

「これ見てから聞いてよ。これが“覚えられたぜバッチリ!!”って奴の表情?違うっしょ」

ミロンの言う通り。

テオドールの危機迫る表情は、どう見ても「覚えられたぜバッチリ!!」には程遠い。

「ハァ……諦めればいいものを」

運ばれてきた肉入りスープを眺めながらカシェルダが本音をこぼす。

「サフィーア姫が俺よりもバカと結婚なさるなんて許せない」

「カシェルダ、オマエってホンットに性格悪いよね。この隠れ毒舌野郎」

面と向かって親友をバカ呼ばわりされピキッときてしまったミロン。

テオドールの代わりに言い返すも、バカにされた本人はこんなことを言い出した。