砂漠の夜の幻想奇談


本人が意味を理解せずに吟唱するなんてあってはならない。

ミロンは違うページを開いた。


「ん~と………お。これいいかも」

詩のタイトルには『赤い薔薇』とある。

「“野に咲く赤い薔薇。芳しい君。近寄ることさえも叶わぬ我が身よ…”さすがに意味わかるよね?」

「赤い薔薇ですか。僕、大好きですよ」

「いや、誰もテオの好み聞いてないから。意味わかるかって聞いてんの!」

「むむむ…」


唸るテオドールに続きを聞かせ、なんとか理解させようと試みる。

親友ミロンは頑張った。



そして十分後。


「あっ、そういうことですか。なるほど」

「理解、できた?」

「はい先生」

「そう、良かった。じゃあ後は暗記だね。オレが読んだら復唱して」


なんとか親友を勝たせてあげたい。

見回りのお役目を放棄して、ミロンはこの後もテオドールのマンツーマンレッスンに時間を割いたのだった。