砂漠の夜の幻想奇談


「あれは僕がまだ騎士に成り立ての頃でした。馬上槍試合で負けてしまったことがあったんです」

槍の腕に自信はあったが、先輩騎士達に敗れまだまだ青二才だと思い知らされた当時のテオドール。

「その時、負けて落ち込んでいた僕に姫が優しく声をかけてくれたんです。ハンカチも頂きました」

「ハンカチ?悔し泣きでもしてたの?」

「べ、別に良いじゃないですか!ほっといて下さい!」

図星だったのか、顔を赤らめる。

そんな彼を見てミロンがニヤニヤと笑った。

テオドールは気恥ずかしさを払うべく、コホンと咳ばらいを一つ。

「あれ以来、近くで会う機会はありませんでしたが、焦がれていました」

「そっか。恋しちゃったのか」

ニヤニヤしたままミロンは言った。

「でもさ。さっきの挨拶でテオは“お初にお目にかかります”って言ってたよね?お初じゃないじゃん」

「あれ?言われてみればそうですね」

「は?なにそれ。挨拶の仕方、間違えたってこと?」

「………」

今更失態に気づき青ざめるテオドール。

沈黙してしまった親友に、ミロンは少しばかり同情した。

彼の肩をポンと叩いて励ましの言葉をかける。

「……ま、いいんじゃない?姫様なんも否定してなかったし。忘れられてるんだよ。きっと」