砂漠の夜の幻想奇談


言ってから、また開かれた手元の本に視線を落とすテオドール。

だから読めてないんだろ!?とミロンは心でツッコミを入れる。

「ああもう!見てらんないよ!オレが手伝ってやる!」

大声で宣言すればテオドールはパァッと顔を輝かせた。

「感謝です。ミロン」

「はいはい。感謝はいいから本貸して」

「はい。どうぞ」

テオドールが見ていたページを渡される。

そこそこ学のあるミロンは詩の内容を読み上げた。

「えっと、なになに?……“回心せよ、王に従うべき貴族ども。最高の宝冠は王にあり。出過ぎる者らよ、これを聞け”…………なにこれ。色気ない」

不満げな表情で本の表紙を確認。

「これ政治歌謡集じゃん!恋歌ないの恋歌!」

「え?今のではダメなんですか?」

キョトンとするテオドールにミロンはビシッと指を突き付けた。

「あ・の・さ!この勝負、サフィーア姫争奪戦なんだよ!?姫への愛情こもった恋の詩を歌わないでどうすんのさ!」