砂漠の夜の幻想奇談


「テオドールはお前のはとこだ。真面目な男だから良い婿になるだろう」

そう言って笑顔を見せる父王にサフィーアは頬を膨らませた。


(私はシャールがいい!)


テオドールの手を振り払い、シャールカーンのもとへ駆け寄る。


(シャール!)


「サフィーア!?」

突進してきたと思ったら強く腰に抱き着かれ、目を見開くシャールカーン。

危うくターバンを落としそうになる。


「サフィーアよ。お前はその男が良いのか?」

アフリドニオス王の低い声にサフィーアは何度も頷いた。

シャールカーンといえば、そんな寵姫を抱きしめたい衝動に駆られたが、我慢に我慢を重ね徐に口を開く。


「私達の結婚をお許し頂けないでしょうか」


真摯な思いが伝わるように王から瞳をそらさない。

すると、アフリドニオス王はしばし思案してからニヤリと笑んだ。


「ふむ……ならばチャンスをやろう」


威厳ある声で王は告げる。

「我が娘の夫となる身なら文武両道に長けて然るべき」

シャールカーンとテオドールを交互に見つめてから、王は三つの課題を突き付けた。

「チェス、詩の吟唱、馬上槍試合。君達二人にはこれらで勝負をしてもらおう。二勝した方をサフィーアの夫とする」