砂漠の夜の幻想奇談


「はい、兄上。僕がノーズハトゥ姫の婚約者となりました」

ふんわりした笑みを浮かべるカンマカーン。

「まさか…カンだったなんて…」

思ってもいなかった事実に少なからず衝撃を受けていると、隣でニコニコしているサフィーアが視界に入った。

「ん?あまり驚いていないね。サフィーアは知ってたのかい?」


(うん!)


即答。

勢いよく頷いた寵姫にまたもや驚く。

「サフィーアは知っていたのか!?なら俺だけ仲間外れだったということか!?」

ムスッと頬を膨らますシャールカーンに、一同クスリと笑う。


(「仲間外れ」って、シャール子供みたい!)


無邪気なサフィーアの笑顔をこっそり見つめてからノーズハトゥは口を開いた。

「私達のことはいずれ公表され、近いうちに婚儀が行われるでしょう。シャールカーン王子、サフィーア姫。その時は是非バグダードにいらして下さいね」