砂漠の夜の幻想奇談



 翌日の午前中。

朝の礼拝が終わってから、ノーズハトゥはカンマカーンを連れ立ってシャールカーンの居住区を訪れた。

居間に通されると、二人並んで絨毯の上に座る。

「シャールカーン王子とサフィーア姫の上に平安がありますように」

長椅子に腰かけるシャールカーンとその寵姫にお決まりの挨拶をしてから、ノーズハトゥは顔を上げた。

「汝らの上にも平安あれ。カン、ノーズハトゥ。よく来てくれたね」

昨日あった出来事に対して、気まずさなど微塵も感じさせない微笑で彼らを迎えるシャールカーン。


「ご紹介致します。シャールカーン王子」

ノーズハトゥは隣にいるカンマカーンの顔を見つめてから真っ直ぐ前を向いた。


「先日お話した私の婚約者、カンマカーン王子です」


「なっ!?カンが!?君の婚約者!?」

聞かされていなかった事実に一人驚く。