砂漠の夜の幻想奇談



 ルステムが自分の主人の部屋に戻ると、丁度シャールカーンが退出するところだった。

「王子、こちらにいらしたのですか…!」

追い出してしまった手前、ばつが悪く慌てて床に平伏す。

「畏まるな。顔を上げてくれ」

優しく言われ、ルステムは恐る恐る顔を上げた。

「ルステム」

「はい」

「ノーズハトゥを、よろしく頼むよ」

短い言葉の裏に隠された多くを察し、ルステムは力強く答えた。

「御意っ!」

頼もしい返事に微笑し、部屋を後にするシャールカーン。

ルステムは王子を見送った後、長椅子に座っているノーズハトゥの傍近くに寄った。


「姫、お身体の具合はいかがですか?」

ちらりと女主人の顔を見る。

少し目が赤いように思われた。

けれど…。


「ええ……大丈夫よ」


憑き物が落ちたような、スッキリした顔で微笑む。

何かが変わった。

良い方へ。

ノーズハトゥに関して敏感なルステムは、そうハッキリ感じ取った。