砂漠の夜の幻想奇談


そっと、そっと。

気づかれないように。

侍女達の目はあるが、彼女達は主人の行動にいちいち口を出さない。

機械仕掛けの人形のようにただ与えられた仕事をこなすだけ。

「さ、姫様も」

空になった包みを素早く懐に仕舞い、ノーズハトゥも手を洗った。

そして、侍女を全員下がらせる。

シャールカーンと二人きり。

テーブルを囲む。


「どうぞ」

割り切ってしまったからだろうか。

ノーズハトゥには笑顔でそれができた。

毒入りのシャーベットを彼に勧める。

「ありがとう」

シャールカーンも笑顔でシャーベットの容器を受け取った。


(これで、いいのよ…)


何も知らない彼は、容器の中身を飲み干すだろう。


(これで……)


シャールカーンが口元に容器を持っていく。

ノーズハトゥは震えた。


(あ、ぁあ……あっ…)


彼の美しい形の唇が、容器に触れる。

ノーズハトゥの顔から血の気が引いた。


(あ、やっ……ま、待って……待って!ヤメテ…!!)


そして、そのまま毒入りのそれが喉へと流し込まれ――。