砂漠の夜の幻想奇談


「ところで、ノーズハトゥ。君は結婚しないのかい?」

「えっ!?」

「君がフェトナー様の秘蔵っ子なのはわかっているけれど、さすがにそろそろ決めないと………って、俺が言っても説得力ないな」

クスリと笑うシャールカーンを、ノーズハトゥは暗い瞳で見つめた。

「婚約者は……います」

「えっ、そうなのか!?初耳だ」

「まだ、公表してませんので…」

「そうなのか。婚儀には是非呼んでくれ。ダマスから飛んで来るよ」

「は……い…」


彼女は、想像した。

自分の婚儀に出席するシャールカーン。

そして、彼の隣には寵姫サフィーア。


(い…や…)


めでたい祝いの日まで、胸が押し潰される苦痛に耐えなければならないのか。


(いや…!!)


ギュッと瞳を閉じる。


(見たくない!!見たくないっ!!!!サフィーア姫と楽しそうに笑い合っている王子なんか、見たくない…!!!!!)



――消してしまいましょう。それが一番です



ダリラの言葉が蘇る。


(消、す……?)


見たくないモノは、消してしまえばイイ。


(そうだわ……やっぱり、王子を……)


服の中に隠した毒薬を思い出す。

死んだような瞳で、ノーズハトゥは心を決めた。