砂漠の夜の幻想奇談



(王子を殺そうだなんて…本当に愚かなことを。こうして会いに来て下さるだけで、私は幸せなのだから)


先程までの自分を否定し、目の前の愛しい人を瞳に映す。

相変わらずの美貌をウットリと眺め、ホゥと溜息をこぼす。

そんな彼女の視線を全く気にせず、シャールカーンは寝台の近くの長椅子に腰かけた。

「ああ、そういえば、俺の部屋にルステムが来たよ」

「ルステムが?」

言われてみれば、いつも傍に侍っているルステムの姿がない。

「サフィーアと母上に話があるみたいでね。俺は追い出されてしまった」

「それは…!ルステムがとんだご無礼を…!」

慌てて謝罪する彼女に、シャールカーンは苦笑した。

「謝るな。気にしてないから。ただ…」

躊躇うように言葉が途切れる。

何でもいいから彼の声を聞いていたくて、ノーズハトゥは続きを促した。

「ただ…?」