砂漠の夜の幻想奇談


そこまで考えて、ハッとなる。

「私…なんてことを…」

王子を殺すなど、とんでもないことだ。

ノーズハトゥはキュッと唇を結ぶと、毒薬の入った包みを懐にしまった。


「失礼するよ」

毒薬を隠したのと、ほぼ同時だった。

ふわりと漂う、甘い薔薇の香り。

「シャールカーン王子…!?」

声だけでノーズハトゥにはわかった。

部屋にやって来たのは、まさしくシャールカーンだった。

「やあ、起きてたんだね。身体は大丈夫?」

「シャ、シャールカーン王子…なぜ、いらっしゃって…」

ノーズハトゥの視線がせわしなく動く。

「なぜって、街で倒れただろう?心配で様子を見に来たんだよ」

「私を…心配なさって下さったのですか」

少しでも彼の心に自分がいることが嬉しい。

ノーズハトゥの頬が熱くなる。