砂漠の夜の幻想奇談



 あの女が憎かろう。

消してしまうのが一番だ。

「これを……使って…」

ノーズハトゥは手の平に残された白い包みを見た。

ダリラが退出して、まだ五分と経っていない。

心は決まらず。


(サフィーア姫を殺す…?憎いから?)


確かに嫉妬はする。

けれど、何か違う気がした。


(サフィーア姫を殺したって、意味がないわ…)


仮にサフィーアを消しても、またシャールカーンのお気に入りが現れたら同じこと。

繰り返される胸の痛み。

それを断ち切りたいならば…。


(……シャールカーン王子を…)


消し去るべき相手はただ一人。


(シャールカーン王子を、殺してしまいたい…)


手に入らないならば、自分の手で葬り、安堵したい。

もう苦しまなくていいと、安心したい。


そして――やっと泣けるのだ。

彼の亡きがらを抱きしめて。