「どうしたの?」
ちょっと躊躇う素振りを見せてから「災厄の母」は懐から小さな包みを取り出した。
「貴女様にはハシーシュよりも、こちらの方がよろしいかと」
手の平にすっぽり収まる小さな紙包み。
「これは…?」
「毒薬でございます」
「ど、く…!?」
寝台の中で少し後ずさったノーズハトゥの肩を抱き、災厄は耳元で囁く。
「これをサフィーア様に飲ませるのですよ。そうすれば、貴女様の憂いは綺麗サッパリ消え失せるでしょう」
邪魔な女は消せ――。
暗にそう語るダリラはノーズハトゥにその包みを握らせた。
「憎いでしょう?シャールカーン王子を奪った、あの女が」
「に、くい……?」
「消してしまいましょう。それが一番です」
「に、く…い……」
麻薬よりも甘美な毒を注ぎ込み、老婆は静かに部屋を出た。



