砂漠の夜の幻想奇談


憂鬱がのしかかる。

思考を働かせるのは億劫で。


考えることを放棄して目を閉じた。

その時――。


「ノーズハトゥザマーン様」


至近距離で聞こえた、しわがれた声。

「えっ!?」

カンマカーンも侍女達も出て行ったと思い込んでいたノーズハトゥは、驚いて飛び起きた。

「おやおや、そんなに慌てなさらなくても。私でございますよ」

「ダ、ダリラ…!」

いつの間に入って来たのだろうか。

ゾバイダ王妃の侍女ダリラ。

老婆はニカッと笑った。

「ご気分はいかがですか?」

「あまり…良くないわ」

伏し目がちに答えると、ダリラは大袈裟に声を上げた。

「おお!それはいけません。またハシーシュを差し上げましょう」

「持っているの!?」

ノーズハトゥの瞳が狂気的に輝く。

彼女の双眸は「欲しい」と語っていた。

「もちろんでございます。あ……いや、しかし」