砂漠の夜の幻想奇談



 目が覚めた時、傍には小柄な少年が座っていた。

「カン、マカーン…王子…?」

「あ!気づきましたか!?」

ノーズハトゥはまだボンヤリする頭でカンマカーンを見上げる。

どうやら自分は寝台に寝かされているようだ、と気づくまで十秒かかった。

「わた、し…」

「街へ出ていたんですよ。覚えてませんか?」

「あ……」

倒れる前の出来事を思い出し、彼女は苦い表情をした。


(私…また、愚かなことを…)


ルステムに黙って王宮を出た。

一時の悦楽と解放を得るために。

ハシーシュを服用すれば、ほんの僅かの間でも心の苦しみから逃れられる。

なんでもいい。

楽になりたかった。


(シャールカーン王子…)


小さい頃からずっと好きで。

けれど、気が弱いから告白なんてできなくて。

近くで見ているだけでいいと諦めて…。


実際、彼女は安心していた。

シャールカーンの女性選びはハードルが高く、誰も彼の特別にはなれない。

このまま特別な存在は現れないだろう。

そんな考えが頭の片隅にあった。


しかし――。


(サフィーア姫…)


現れてしまった。

自分よりもずっと年下の可愛らしい少女。